心温まる話 76選

ほっとしたいときに。じんわり温かくなる、やさしい短編。

171
創作家族約4分

父の豆知識は九割うそ

父の言う豆知識は、だいたい嘘だ。大学入試の朝、会場まで車で送ってくれた父が、降りる直前にまた何か言い出した。

170
創作学校・先生約3分

二年三組の時計

中学二年三組の学級日誌。日直が毎日一行ずつ書き、担任が赤ペンで返事をする。十月のあるページから、教室の時計の話が始まった。

167
創作恋愛・夫婦約4分

義実家メモ

結婚して最初の正月、夫の実家は大分の山の中。三日間で覚えた決まりごとを、妻はスマホのメモに書きためた。

166
創作家族約2分

一日四百十二円

仙台で一人暮らしを始めた十九歳の息子。その家計簿を、父は居間のタブレットで見てしまった。

164
創作学校・先生約3分

プール開放、十四日間

夏休みの小学校のプール開放。監視台の先生の前に、毎日水着で来て、一度も水に入らない二年生がいた。

161
創作見知らぬ人約5分

もうひとりの佐久間さん

丁目がひとつ違うだけの、同じ番地の同じ苗字。四十年あまり、郵便を届け合ってきた相手の顔を、私はまだ知らない。

157
創作仕事約3分

十九時四十分の値引き

閉店まであと一時間二十分。スーパーの鮮魚売り場で値引きシールを貼るパートと、毎晩同じ時刻に来る作業着の客。

156
創作家族約4分

代打の三者面談

母は夜勤明け、父は名古屋に単身赴任。中三の弟の三者面談に、大学三年の兄が行くことになった。

154
創作見知らぬ人約2分

立会人席

市議会議員選挙の日曜日。小学校の体育館の投票所で、朝七時からパイプ椅子にすわっている七十一歳の立会人。

151
創作恋愛・夫婦約4分

ハゼ一匹

結婚して三十一年、竿にさわったこともない女房が、急に「釣りに連れていけ」と言い出した。

150
創作動物約3分

きなこを預かった二週間

娘一家がハワイへ行くあいだ、孫のハムスターを預かることになった。七十四歳、生き物の世話は五十年ぶり。

146
創作家族約3分

冷蔵庫のホワイトボード

八十一歳の祖父に、免許を返してほしい。家族四人の話し合いは、冷蔵庫のホワイトボードの上で進んだ。

144
創作学校・先生約4分

石の連絡帳

小学二年のたいちのランドセルには、いつも石が入っている。新任の担任と、夜勤の多い母親が書きつなぐ連絡帳。

143
創作見知らぬ人約4分

写ルンです、残り四枚

夏休みの一人旅。灯台の前で、老夫婦に写真を頼まれた。渡されたのは、画面のないカメラだった。

142
創作動物約2分

洗濯ばさみ

ベランダの洗濯ばさみが、ひとつずつ減っていく。犯人は、向かいの電柱に巣をかけたカラスだった。

140
創作仕事約3分

片側交互通行

夜の県道の工事現場。赤い誘導灯を振る六十七歳と、二十歳の新人。夜明けまで、あと六時間。

134
創作見知らぬ人約3分

スタンプの送り方

病院の待合で、隣のおばあさんに「これ、どうやったら動物のが出るの」とスマホを差し出された。

133
創作見知らぬ人約3分

臨時列車

花火大会の帰り、すし詰めの臨時列車。男子高校生の足もとに、迷子の女の子がいた。

132
創作学校・先生約3分

教育実習の三週間

母校に教育実習に行ったら、指導教員は、高校時代にいちばん苦手だった先生だった。

130
創作仕事約3分

フロント引き継ぎノート

駅前の古いビジネスホテル。夜勤のフロント係が書きつなぐ引き継ぎノートに、長期滞在の客のことが増えていく。

122
創作家族約3分

孫と花札

息子が離婚して、週末だけ小学五年の孫を預かることになった。口をきかない孫と、七十三の祖母。

121
創作家族約3分

網戸の張り替え

一人暮らしの娘から「網戸が破れた」と電話が来た。父は工具箱を積んで出かけた。

119
創作家族約2分

父とドラッグストア

中二の娘に頼まれて、父がはじめて買いに行ったもの。

116
創作見知らぬ人約3分

立ち往生

大雪で止まった高速道路。隣のトラックの運転手がくれたもの。

115
創作恋愛・夫婦約2分

足を踏む人

六十八歳から始めた社交ダンス。夫はいつも足を踏んだ。

114
創作仕事約2分

チャンさんのメモ

コンビニの留学生バイトが、国に帰る前に残したもの。

110
創作別れ約2分

松の湯のお知らせ

閉店する銭湯の入口に貼られた、手書きの紙。

108
創作学校・先生約3分

作文のうそ

塾の生徒が書いてきた「家族旅行」の作文。

107
創作見知らぬ人約3分

午前二時のコインランドリー

誰かの乾燥機が止まったまま、持ち主は現れなかった。

105
創作恋愛・夫婦約2分

誤爆

別れて半年、元彼から間違えて届いたLINE。

101
創作家族約3分

ワゴンRで行く

結婚式の前の晩、娘が「あの車で行きたい」と言い出した。

93
実話実話約2分

九十五年後の恩返し

和歌山の漁村が救ったトルコ人と、九十五年後にテヘランで起きたこと。

86
創作挑戦約2分

みんなの店

閉店を決めた喫茶店の主人を、常連たちが引き止めた方法。

70
創作見知らぬ人約2分

優先席

妊婦だった私に席を譲らせた高校生と、二十年後の同じ言葉。

67
創作見知らぬ人約2分

最初の百円

自販機の前で十円足りなかった日、スーツの男性がくれた百円玉。

65
創作見知らぬ人約2分

のり弁と缶ビール

毎晩同じ弁当を買う常連客が、一週間来なかった。

64
創作見知らぬ人約2分

杖の老人

東欧の町で迷った夜、言葉の通じない老人が宿まで歩いてくれた。

62
創作見知らぬ人約2分

黒い傘の傷

雨の日に知らない人から借りた傘が、十年かけて戻ってきた。

60
創作学校・先生約2分

所見欄の一行

取り柄がないと思っていた私の通知表に、先生が書いたこと。

57
創作学校・先生約2分

口パクの人

合唱コンクールで口パクを頼まれた私に、指揮者の男子が言ったこと。

56
創作学校・先生約2分

貸出カードの名前

図書室で借りる本のカードに、いつも自分の一つ上に書かれていた名前。

54
創作学校・先生約2分

三年間の作文

定年退職する厳しい国語の先生が、最後の授業で読んだもの。

53
創作学校・先生約2分

レモン味の飴

毎日保健室に来る生徒に、養護の先生が黙って置いていったもの。

48
創作仕事約2分

ベリーショート

抗がん剤で髪が抜ける前に、常連のお客さんが頼んだ髪型。

47
創作仕事約2分

ポストの前の人

毎日ポストの前で郵便を待つ一人暮らしのおばあさんと、配達員。

46
創作仕事約2分

丸のついた献立表

給食室で三十年。毎日きれいに空になって戻ってくる食器があった。

45
創作仕事約2分

メーターを倒し忘れた夜

深夜、赤ん坊を抱えた女性を救急病院へ運んだタクシー運転手。

43
創作仕事約2分

名札の名前

誰にも名前を呼ばれない清掃員に、ある新入社員が言った一言。

42
創作仕事約2分

閉店の日の棚

五十年続いた町の本屋が、最後の日に作った特別な棚。

41
創作仕事約2分

運転席の窓のメモ

廃線になるローカル線の運転士と、毎朝一番前に座った少年。

39
創作動物約2分

牛舎の歌

酪農家の父が、牛舎でだけ歌っていた歌。

38
創作動物約2分

モカのお葬式

五歳の娘が、はじめて命の終わりに向き合った朝。

37
創作動物約2分

背中の重さ

人間を怖がる保護犬と、同じ部屋で本を読みつづけた三か月。

34
創作動物約2分

おまけの金魚

夏祭りでもらったおまけの金魚は、十二年生きた。

33
創作動物約2分

ハーネスを外した日

十年間の盲導犬が引退する前の日、最後の散歩。

32
創作動物約2分

十一の名前

商店街の人たちが、それぞれ別の名前で呼んでいた一匹の猫。

28
創作友情約2分

半分のパン

給食のパンを毎日持ち帰る友達の後を、ある日つけていった。

27
創作友情約2分

郵便将棋

祖父が三十年続けた、顔を知らない相手との手紙の将棋。

26
創作友情約2分

二十一枚目の案内状

返事をくれない同級生に、同窓会の案内を送りつづけた。

24
創作友情約2分

入学式の日の顔

クラスで無視されていた私の似顔絵を、あの子は笑顔で描いた。

22
創作友情約2分

三十一通

転校していった人気者の机の中に、クラス全員分の手紙があった。

21
創作友情約2分

千円のショートケーキ

高校のときに貸した千円が、二十年たって封筒で返ってきた。

20
創作恋愛・夫婦約2分

味噌汁の濃さ

四十年間、夫が文句を言わなかった理由。

19
創作恋愛・夫婦約2分

逆さまの月

遠距離恋愛の二人が決めた、夜九時のルール。

18
創作恋愛・夫婦約2分

傘立ての紺色

雨の日にだけ傘を忘れていく、喫茶店の常連客。

16
創作恋愛・夫婦約2分

見てもいい?

目の見えない彼女が、僕の顔にさわった日。

15
創作恋愛・夫婦約2分

靴箱の上の缶コーヒー

夜勤の妻と早朝勤務の夫が、玄関ですれ違う五分間。

14
創作恋愛・夫婦約2分

毎日のプロポーズ

妻のことを忘れた夫が、面会のたびに言う一言。

13
創作恋愛・夫婦約2分

片方の手袋

別れた彼の手袋が、片方だけ部屋に残った。

12
創作恋愛・夫婦約2分

五十枚の便せん

「愛してる」と言わない祖父が、金婚式の日に渡した封筒。

11
創作恋愛・夫婦約2分

七時十二分の各駅停車

毎朝同じ車両の、同じ本を読んでいる人。

10
創作家族約2分

裏返しの「め」

字が書けない母が、娘の入学式の朝にテーブルに置いた紙。

8
創作家族約2分

背中の文字

口下手な兄が、弟の背中に指で書いた言葉。

7
創作家族約2分

祖母の家の番号

亡くなった祖母の家の番号に電話をかけたら、知らない人が出た。

6
創作家族約2分

弁当箱の蓋の裏

口をきかない娘の弁当に、母が毎日貼ったメモ。

3
創作家族約2分

ビリの理由

運動会でいつもビリの息子が、転んだ子の前で立ち止まった。