午前二時のコインランドリー
午前二時、国道沿いのコインランドリーには、美咲のほかに誰もいなかった。
蛍光灯が一本、切れかけて点滅していた。壁の張り紙には「夜間のご利用はトラブル防止のためお控えください」とあり、その下に、ボールペンで誰かが「じゃあ昼開けとけ」と書き足していた。
美咲の洗濯機はあと二十四分だった。三日ぶんの制服と、子どもの体操服。夜勤明けに寄るのがいちばん空いている。
奥の乾燥機が一台、止まっていた。扉のガラス越しに、洗濯物が丸まっているのが見えた。表示は「終了」。いつ終わったのかはわからない。
十分たっても、持ち主は来なかった。
美咲はスマホを見て、閉じて、また見た。乾燥機の中の洗濯物が気になった。乾燥が終わってから時間がたつと、しわになる。
十五分たって、美咲は立ち上がり、乾燥機の扉を開けた。中の熱がまだ少し残っていた。
小さな服ばかりだった。三歳くらいの子の、恐竜の柄のTシャツが四枚。大人の女のジャージが一着。それから、病院の名前が刺しゅうされた白いタオルが何枚か。美咲も同じ病院に勤めていたが、そのタオルは入院病棟で使うものだった。
美咲は、備え付けの作業台に洗濯物を移して、たたみはじめた。
Tシャツは恐竜が内側になるようにたたんだ。ジャージは袖を後ろで折った。タオルは三つ折りにしてから半分にした。病棟でいつもやっているたたみ方だった。
たたみ終わったところで、自分の洗濯機のブザーが鳴った。
美咲は自分の洗濯物を空いた乾燥機に入れ、百円玉を三枚入れた。それから、たたんだ洗濯物の山の横に、何か書き置きしようと思って、バッグの中を探った。ペンはあったが、紙がなかった。レシートの裏に書こうとして、やめた。何を書いても、知らない人に服をさわられたと思われるだけのような気がした。
結局、何も書かなかった。
乾燥が終わるまでの三十分、持ち主は来なかった。
美咲は自分の洗濯物をかごに入れて、店を出た。自動ドアが閉まる前に振り返ると、作業台の上に、恐竜のTシャツの山がきちんと積まれていた。蛍光灯はまだ点滅していた。
三日後の夜勤明け、美咲はまた同じコインランドリーに寄った。
作業台の上に、紙が一枚、セロハンテープで留めてあった。
「先日、乾燥機の洗濯物をたたんでくださった方へ。病院に泊まり込んでいて、取りに来るのが朝になってしまいました。息子が、恐竜が中になってるのを見て、びっくりばこみたいだと喜んでいました。 402号室の母より」
その下に、クレヨンで、緑色の、たぶん恐竜の絵が描いてあった。足が六本あった。
美咲は紙をしばらく見てから、自分の洗濯物を洗濯機に入れた。
読み終えて、どうでしたか