入学式の日の顔
中一の五月から、わたしはクラスで無視されていた。
きっかけは、たぶん、ない。気づいたら誰も話しかけてこなくなって、班を決めるときに余って、給食は机をくっつけてもらえなかった。先生は気づいていたと思うけど、何もしなかった。
美術の時間に、ペアでお互いの似顔絵を描く授業があった。わたしは当然余った。もう一人、余った子がいた。美咲ちゃん。
美咲ちゃんも一人でいることが多かった。でもそれは、休み時間にずっとノートに絵を描いているからで、わたしとは種類が違った。
美咲ちゃんは、ほとんどしゃべらなかった。わたしの顔をじっと見て、鉛筆を動かした。見られるのが恥ずかしくて、わたしは窓の外ばかり見ていた。わたしの描いた美咲ちゃんは、正直、宇宙人みたいになった。
授業の終わりに、絵を交換した。
美咲ちゃんの絵の中のわたしは、笑っていた。口を開けて、目がなくなるくらい。
「こんな顔してないよ、わたし」
この一か月、笑った覚えがなかった。
美咲ちゃんは、ちょっと困った顔で言った。
「入学式の日、あなたの後ろの席だったの。帰りに、お母さんと写真撮ってたでしょ。校門のとこで。そのときの顔」
覚えていない。そんな顔をしていたのか。
「あと、わたしの絵、宇宙人みたいでごめんね」とわたしは言った。
「……ちょっとね」と美咲ちゃんは言って、初めて笑った。前歯に矯正の金具がついていた。
次の日から、美咲ちゃんはわたしの隣で給食を食べるようになった。机をくっつけるとき、ガタンと大きな音がして、クラスの何人かがこっちを見た。美咲ちゃんは気にしなかった。
話すことはそんなに多くなかった。美咲ちゃんは食べながら絵を描いていた。わたしはそれを見ていた。行儀が悪いと先生に一回怒られた。二人とも。
美咲ちゃんは今、イラストレーターをしている。去年、本の表紙の仕事をしたと連絡が来た。本屋で見つけて買った。表紙の女の子は、口を開けて、目がなくなるくらい笑っていた。
似てるかどうかは、わからない。わたしは自分の笑った顔を、あまり見たことがない。
読み終えて、どうでしたか