二十一枚目の案内状
小学校の同窓会の幹事を、なぜか二十年やっている。
最初に「誰かやってよ」と言われて手を挙げたのが運のつきで、それからずっと。集まるのは毎回五、六人。卒業生は三十人いたけど、ほとんどは連絡がつかないか来ない。それでも住所のわかる二十一人には、毎年はがきを出している。
その中に、一度も返事をくれない人がいた。中村君。
小学校のころの中村君とは、ほとんど話したことがない。休み時間は図書室にいた子だ。実家の住所だけはわかっていたので毎年送った。返事はない。宛先不明で戻ってくることもない。
正直に言うと深い意味はなかった。名簿に名前があるから送っていただけで、はがきを一枚減らす理由もなかった。
二十一回目の同窓会の日。駅前の居酒屋の座敷に、知らない男の人が立っていた。
「中村です」
みんな誰だかわからない顔をした。僕もわからなかった。名札を作っておいてよかった。
中村君はかばんからはがきの束を出した。二十年分が輪ゴムでとめてあった。いちばん上のは、たしか去年僕がボールペンのインクが切れかけたまま書いたやつで、宛名がかすれていた。
「毎年来るんですよ。行こうと思って、行けなくて。誰もおれのこと覚えてないだろうなって」
誰も覚えていなかった。僕を含めて。
「でも毎年来るんですよね、これ。二十年一回も途切れないから、さすがに誰か一人は覚えてるんだろうと思って」
僕は「そうそう」と言った。うそだった。
中村君はその夜、一番遅くまで残った。小学校の図書室の本の配置を全部覚えていて、「『かいけつゾロリ』は窓側の三段目」と言って、みんなをびっくりさせた。みんなは中村君のことは覚えていなかったけど、ゾロリの場所は覚えていた。
帰り道、中村君が言った。
「来年も送ってくれますか」
「もちろん」
これはうそじゃなかった。
翌年の案内状も二十一枚だった。枚数は変わらない。中村君の分は、宛名を書く前にボールペンを二回、新聞紙の端で試し書きした。
読み終えて、どうでしたか