元気が出る話 48選
くじけそうなときに。もう一歩だけ踏み出したくなる話。
カツ丼二・五キロ
三十分で食べきればタダ、写真が壁に貼られる。体重五十二キロの高二が、商店街の定食屋のチャレンジメニューに挑んだ。
百八十六段
長崎の実家の米屋を手伝うことになった。最初の配達先は、車の入らない坂の上。五キロの米を担いで階段を上る。
プール開放、十四日間
夏休みの小学校のプール開放。監視台の先生の前に、毎日水着で来て、一度も水に入らない二年生がいた。
親子リレーまで十九日
小学二年の娘の運動会に、親子リレーがある。四十一歳、最後に全力で走ったのはたぶん高校の体育祭だ。
立会人席
市議会議員選挙の日曜日。小学校の体育館の投票所で、朝七時からパイプ椅子にすわっている七十一歳の立会人。
はじめての床屋
小学四年の男の子が、四つ折りの千円札を二枚にぎって、はじめて一人で床屋のドアを押す。
川柳欄
地方紙の川柳欄に、はがきを出しつづけて十一年。七十四歳の私の句は、まだ一度も載っていない。
最後の一箱
健康診断で医者に言われて、五十六歳で禁煙を始めた。これが四回目になる。
臨時列車
花火大会の帰り、すし詰めの臨時列車。男子高校生の足もとに、迷子の女の子がいた。
教育実習の三週間
母校に教育実習に行ったら、指導教員は、高校時代にいちばん苦手だった先生だった。
補習は一人
物理で赤点をとった夏休み。補習に来たのは、自分と、新任の先生だけだった。
スピーチ原稿
高校からのツレの結婚式で、友人代表のスピーチを頼まれた。人前でしゃべるのが一番苦手な男に。
ボイラー室の人
教室に入れなかった冬、用務員さんのいる部屋で過ごした。
ツッコミ担当
吃音の友達と、文化祭で漫才をやることになった。
仮免、三回目
六十五歳で教習所に通いはじめた母の話。
ファミチキ半分
部活をやめた親友と、コンビニの駐車場で話したこと。
六つの点
三歳で光を失った少年ルイ・ブライユが、十五歳で発明した文字。
稲むらの火
津波から村人を救うため、刈り取った稲わらに火を放った浜口梧陵。
砂漠に水を引いた医師
病気を治すより水が必要だと、アフガニスタンで用水路を掘った中村哲。
「ウォーター」
見えない、聞こえない少女ヘレン・ケラーが、言葉を知った瞬間。
六千人の命のビザ
本国の命令に背き、ユダヤ難民にビザを書き続けた外交官・杉原千畝。
壁当て
三年間一度も勝ったことのない控え投手が、延長十二回にマウンドへ。
百円の詩
地下道で詩を売っていたホームレスの男性と、二百枚目の詩。
四段の跳び箱
六年間一度も跳べなかった跳び箱を、卒業の一週間前に。
みんなの店
閉店を決めた喫茶店の主人を、常連たちが引き止めた方法。
口で書く小説
字を読むのが苦手な少年の物語を、先生がノートに書き取った。
腕で走る
事故で歩けなくなった元マラソン選手に、後輩が見せた一本の動画。
二百一回目
十年間オーディションに落ち続けた俳優が、演劇の先生に見せられたもの。
別れの曲
戦争でピアノを奪われた祖母が、八十歳で出た初めての発表会。
四十歳の見習い
会社を辞めてパン屋に弟子入りした四十歳と、親方の一言。
最後の在校生
島の小学校が閉校する年、たった一人の卒業生のために開かれた式。
原付の音
荒れていた高校時代、毎朝原付で迎えに来た担任の最期。
手帳の余白
受験直前に電車で落とした手帳が、知らない人の書きこみ付きで戻ってきた。
のり弁と缶ビール
毎晩同じ弁当を買う常連客が、一週間来なかった。
終電のベンチ
五十社落ちた夜、駅のベンチで声をかけてきた駅員。
天文部の最後の部員
廃部になった天文部で、一人だけ屋上に上がりつづけた。
先生の0点
「先生も昔はダメだった」が口癖の担任の家で見つけたもの。
全員でゴール
走れない友達のために、クラスで考えたリレーの作戦。
空いた枠
一年間学校に行けなかった私の卒業アルバムに、写真の代わりに入っていたもの。
答案の裏
0点の答案の裏に描いた落書きに、数学の先生が赤ペンで書いたこと。
タクトを置いた指揮者
市民オーケストラの指揮者が、最後の演奏会の途中で腕を下ろした。
最後に覚えた漢字
夜間中学の七十二歳の生徒と、三年目の新米教師。
ベリーショート
抗がん剤で髪が抜ける前に、常連のお客さんが頼んだ髪型。
三十年前のネジ
倒産寸前の町工場に、宇宙開発メーカーから電話がかかってきた。
屋上の鍵
屋上に行こうとした日、扉の鍵を持っていたのは同じクラスの目立たない子だった。
ツケの紙
売れない芸人時代、定食屋の親父が壁から外したもの。
入学式の日の顔
クラスで無視されていた私の似顔絵を、あの子は笑顔で描いた。
八百メートル
事故で走れなくなった親友と、最後の大会の約束。