創作友情約3分

ファミチキ半分

正直に言うと、健斗がバスケ部をやめたとき、おれはちょっとほっとした。

同じポジションだったから。あいつがいなくなればスタメンに入れる。最低だと思うけど、最初に思ったのはそれだった。

やめた理由は、家の事情ってことになってた。親父さんの店がやばいらしい、とクラスのやつらが噂してた。本人は何も言わなかった。

三週間くらい、まともに話さなかった。避けてたわけじゃない。部活の時間がずれて、帰り道が一緒にならなくなっただけ。……いや、ちょっと避けてた。

ある日、練習の帰りにセブンに寄ったら、駐車場の車止めのブロックに健斗が座ってた。バイトの帰りらしくて、黒いエプロンを丸めて膝にのせてた。

「おう」

「おう」

それで終わりそうだったから、おれは店に入ってファミチキを買った。ほんとはセブンだからファミチキじゃなくてななチキなんだけど、おれらはずっとファミチキって呼んでる。どうでもいいけど。

外に出て、半分にちぎって渡した。一年のとき、部活帰りにいつもそうしてたから。二個買う金がなかったんじゃなくて、なんとなく半分がちょうどよかった。

健斗は受け取って、食べずに持ってた。

「スタメン、入った?」

「……入った」

「よかったじゃん」

本気で言ってるっぽかったのが、逆にきつかった。

「お前がいたら入ってないけどな」

言ってから、しまったと思った。健斗は笑った。久しぶりに見た、変な笑い方だった。鼻から息が抜けるやつ。

「それな」

それからしばらく、二人とも何もしゃべらなかった。店から出てきたおっさんが、ブロックに座ってるおれらをちらっと見て、軽トラで出ていった。

健斗は、ファミチキを少しずつ食べた。すげえゆっくり食べた。途中で「うま」って言った。

「バイト、何やってんの」

「親父の店。配達」

「店、大丈夫なの」

「わからん」

わからん、で終わった。おれはそれ以上聞けなかった。聞いてもどうにもできないから。

帰りぎわ、健斗が言った。

「次の試合いつ」

「再来週の土曜。市民体育館」

「ふーん」

来るとも来ないとも言わなかった。

再来週の土曜、おれは第二クォーターの途中で交代させられた。ベンチに戻るとき、二階の観客席の端っこに、黒いエプロンをしたやつが座ってるのが見えた。配達の途中で寄ったんだと思う。前半が終わったころには、もういなかった。

試合は負けた。帰りにセブンに寄ったけど、駐車場には誰もいなかった。

おれはファミチキを一個買って、半分食べて、残りの半分を持ったまま家まで歩いた。

#眠れない夜に読む話 #元気が出る話

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