はりねずみの ゆうびんやさん
もりの いりぐちに、きの みきを くりぬいた、ちいさな ゆうびんきょくが あります。
まどぐちに すわって いるのは、ふくろうの きょくちょう。めがねを かけて、はんこを ぽん、ぽん、と おして います。
その あさ、ゆうびんきょくに、あたらしい はいたついんが やって きました。
「きょうから はたらきます、はりねずみの チクタです!」
チクタは、ちいさくて、まるくて、せなかが とげとげでした。
きょくちょうは めがねを ずらして チクタを みました。
「では チクタくん、この てがみを、もりの みんなに とどけて くれたまえ」
てがみは ぜんぶで いつつ。チクタは それを せなかに しょって、げんきよく でかけました。せなかの とげに、てがみが ぷすぷすと ささって、ちょうど よく とまったのです。
「べんりだなあ、ぼくの せなか」
ひとつめは、りすの おばあさんへの てがみ。
「りすの おばあさん、おてがみです!」
チクタが せなかから てがみを ぬくと、てがみには ちいさな あなが みっつ あいて いました。
おばあさんは てがみを ひろげて、まどの ほうへ かざしました。あなから、おひさまの ひかりが ちらちら もれました。
「おや、まごからの てがみだね。……ここ、『だいすきな おばあちゃんへ』の『だい』の ところに あなが あいてるよ」
「ご、ごめんなさい」
「いいの、いいの。『すきな おばあちゃん』でも、じゅうぶん うれしいからね」
ふたつめは、うさぎの いえ。みっつめは、たぬきの いえ。どの てがみにも、あなが あいて いました。
うさぎは「なんだか、ほしぞらみたいな てがみ」と いいました。たぬきは あなから めを のぞかせて「ばあ」と いいました。みんな やさしかったけれど、チクタの こころは、だんだん しょんぼり して いきました。
よっつめは、かめの おじいさんへの、こづつみでした。
こづつみは、ころころした まるい かたちで、どうやら なかには どんぐりが はいって いる ようでした。
チクタは こづつみを せなかに のせようと しました。ところが、とげに ささった とたん、つつみが やぶれて、どんぐりが ころころ ころころ、さかみちを ころがって いって しまいました。
「まって、まって!」
チクタは まるく なって、どんぐりを おいかけて、さかみちを ころがりました。ころころ、ころころ。ころがりながら、とげに どんぐりが ぷすっ、ぷすっと ささって いきます。
さかの したに ついた とき、チクタの せなかには、どんぐりが ぜんぶ ささって いました。いっこも なくして いません。
かめの おじいさんは、くびを ながーく のばして、チクタを みました。
「これは これは。どんぐりの ぼうしを かぶった はりねずみが とどいたぞ」
おじいさんは、ひとつずつ ていねいに どんぐりを ぬいて、かぞえました。ぜんぶで じゅうに こ。
「ひとつも かけて おらん。たいした はいたつだ」
チクタは すこし だけ、むねを はりました。
いつつめの てがみは、さいごの いちまいでした。あてなを みると、こう かいて ありました。
「ゆうびんきょく チクタさまへ」
チクタは めを ぱちぱち させました。じぶんあての てがみなんて、はじめてです。
てがみには、あなが ひとつも あいて いませんでした。だって、ずっと せなかでは なく、てに もって あるいて いたからです。
ひらいて みると、りすの おばあさんの まごたちからでした。
『あたらしい はいたついんさんへ。もりへ ようこそ。ぼくたちの いえは、いちばん たかい きの うえです。こんど あそびに きてね』
その ばん、チクタは ゆうびんきょくに かえって、きょくちょうに いいました。
「きょくちょう、ぼく、かばんが ほしいです」
きょくちょうは めがねを くいっと あげて、たなの おくから、ちいさな かわの かばんを だして くれました。むかし、ねずみの はいたついんが つかって いた ものだそうです。
つぎの あさから、チクタは その かばんを かたから さげて はいたつに でかけました。てがみには、もう あなは あきません。
でも、どんぐりの こづつみの ひだけは、とくべつです。
チクタは かばんを おろして、まるく なって、さかみちを ころころ ころがって いくのです。もりの こどもたちは、それを みるのが、だいすきでした。
読み終えて、どうでしたか