創作友情約2分

グリコ

小学校の帰り道、ゆかちゃんとじゃんけんグリコをした。

グーで勝ったら「グ・リ・コ」で三歩、チョキなら「チ・ヨ・コ・レ・イ・ト」で六歩、パーなら「パ・イ・ナ・ツ・プ・ル」で六歩。知ってる人は知ってると思う。

ゆかちゃんは、ほとんどいつもグーを出した。だから、わたしがパーを出せばだいたい勝てた。二年生のわたしはそれに気づいて、毎日パーを出した。毎日勝った。ゆかちゃんは毎日、角の駄菓子屋あたりで大きく置いていかれて、「まってえ」と言いながら走ってきた。

三年生のある日、ゆかちゃんが初めてチョキを出した。

わたしはパーだった。負けた。ゆかちゃんは「チ・ヨ・コ・レ・イ・ト」と一歩ずつ大きく跳んで、振り返って、ものすごく得意そうな顔をした。前歯が一本なかった。

次の日も、ゆかちゃんはチョキを出した。わたしは今度はグーを出して勝った。そしたらゆかちゃんは、その次の日、またグーに戻った。わたしはパーで勝った。

四年生のとき、ゆかちゃんは引っ越した。お父さんの仕事で、名古屋に行くと言っていた。

最後の帰り道も、グリコをした。ゆかちゃんはグーを出した。わたしは、なんとなく、チョキを出した。負けた。ゆかちゃんは「グ・リ・コ」と三歩進んで、振り返った。

「なんでチョキ出したん」

「わからん」

本当にわからなかった。わざと負けたのか、まちがえたのか、自分でもよくわからない。

そのあとは何回やっても、なぜかわたしが負けた。ゆかちゃんの家の前に着いたとき、ゆかちゃんはわたしより二十歩くらい先にいた。

「勝った」とゆかちゃんは言った。

「うん」

「はじめて勝った」

「チョキで勝ったことあるやん」

「あれは一回やもん。最後まで勝ったんははじめて」

ゆかちゃんは、ランドセルの肩ベルトを両手でぎゅっと握って、それから家に入っていった。

それきり会っていない。年賀状は、五年生まで来て、来なくなった。

こないだ、娘と保育園から帰るとき、娘が「グリコしよう」と言った。誰に教わったのか知らない。

娘はグーばっかり出した。

わたしは、三回に一回くらい、チョキを出している。

#大切な人に会いたくなる話 #眠れない夜に読む話

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