創作ねるまえのおはなしシリーズ「もりの ゆうびんきょく」約4分

まいあさの どんぐり

もりの ゆうびんきょくの まえには、木の えだで できた ポストが あります。

ある あさ、チクタが ポストを あけると、中に どんぐりが 一つ ころんと はいって いました。

てがみは ありません。あてなも ありません。どんぐりの おしりに、ちいさな ひっかききずが 二つ ついて いる だけです。

「きょくちょう、どんぐりが はいって いました」

ふくろうの きょくちょうは、めがねを くいっと あげて、どんぐりを ひかりに かざしました。

「ふむ。あてなの ない どんぐりは、とどけようが ないね」

つぎの あさも、どんぐりが 一つ。そのつぎの あさも、一つ。

「だれかが よるの あいだに いれて いくんだ。ぼく、みはりを します」

きょくちょうは「よるは ねる じかんだよ」と いいました。きょくちょうは ふくろうですが、よるは ちゃんと ねます。ゆうびんきょくの しごとは ひるまだからです。

一ばんめの よる。

チクタは ポストの よこの こけの うえに すわりました。こけは しっとり して いて、すこし つめたくて、いい においが しました。

チクタは 目を まんまるに して、ポストを 見はりました。

ポストを 見はりました。

見はり ました。

……あさ、チクタは こけの うえで まるく なって いました。せなかの とげに、こけが いっぱい くっついて いました。ポストの 中には、どんぐりが 一つ。

「ねむっちゃった」

二ばんめの よる。

こんどは ねむく ならない ように、まつぼっくりの うえに すわる ことに しました。ちくちく して いれば、ねむれない はずです。

ところが、すわって みると、まつぼっくりは ちっとも ちくちく しませんでした。チクタの おしりの ほうが、ずっと ちくちく して いたからです。

「あれ。きもちが いい」

……あさ、チクタは まつぼっくりを だいて ねむって いました。ポストの 中には、どんぐりが 一つ。

きょくちょうが、ほう、と ためいきを つきました。

「チクタくん、きみの ほうが まつぼっくりに 見えるよ」

三ばんめの よる。

チクタは かんがえました。ねむって しまうのは しかたが ない。だったら、ポストに おこして もらえば いい。

チクタは、かわの かばんに ついて いた ちいさな すずを はずして、ポストの くちに ぶらさげました。だれかが どんぐりを いれたら、すずが なる はずです。

そして、ポストの よこで、さいしょから まるく なって ねむりました。

まよなか。

ちりん。

チクタは とびおきました。

ポストの うえに、ちいさな くろい ものが さかさまに ぶらさがって いました。はねを たたんで、あしで えだに つかまって います。

こうもりの こどもでした。

「あ」と こうもりは いいました。

「あ」と チクタも いいました。

こうもりの こどもは、ピピと いう なまえでした。ピピは さかさまの まま、もじもじ しました。

「ぼく、よるに おきて、ひるに ねるの。だから、みんなが おきて いる とき、ぼくは ねて いて、ぼくが おきて いる とき、みんなは ねて いるの」

「それで、どんぐりを?」

「ぼく、じが かけないから。どんぐりが、ぼくの こんばんは」

「だれに あてた こんばんは?」

ピピは はねの さきで、チクタを ゆびさしました。

「まえに 空から 見たの。どんぐりを せなかに いっぱい さして、さかみちを ころころ ころがって いく はりねずみ。どんぐりが すきなんだと おもって」

チクタは、ぷっと ふきだしました。あの ひの こづつみの ことです。

「あれは、かめの おじいさんの どんぐりだよ」

「なあんだ」

ピピも さかさまの まま わらいました。わらうと、からだが ぶらん ぶらん ゆれました。

その よるは、すこしだけ、二人で はなしを しました。ピピが 空から 見た もりの はなしです。りすの おばあさんの 木の てっぺんには、とりの すが 三つ ある こと。いけの 水に うつる 月は、かめの おじいさんの こうらの うえに ちょうど のる こと。

空が すこし しろく なって くると、ピピは あくびを しました。

「ぼく、もう ねる じかん」

「ぼくは、もう おきる じかん」

ピピは はねを ひろげて、もりの おくへ とんで いきました。

つぎの 日の ゆうがた。

しごとを おえた チクタは、ポストの 中に、どんぐりを 一つ いれました。おしりに、ちいさな とげの あとを 一つ つけて。

「チクタくん、それは だれに あてた ゆうびんだね」

きょくちょうが ききました。

「ピピです。ぼくの、おやすみ です」

その よる、チクタは かわの かばんを まくらに して、ぐっすり ねむりました。

まよなか、ゆうびんきょくの まえで、すずが ちりん と なりました。

チクタは ねむった まま、はなを 一かい ぴくっと させました。

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