ゆげの ふわり

みおちゃんの いえの おふろばに、ゆげの ふわりが いました。

ふわりは、おふろが わくと うまれます。おとうさんが おゆに つかって「ああ ごくらく、ごくらく」と いうと、ふわりは てんじょうまで のぼって いきます。おとうさんの へたな うたも、いっしょに のぼって いきます。

てんじょうの すみには、小さな まどが あります。そこから 空が 見えます。空には くもが うかんで います。

「いいなあ。ぼくも あんなに 大きく なりたいなあ」

ある よる、その まどが すこしだけ あいて いました。

「いまだ」

ふわりは すきまから、そとへ ふわふわ でて いきました。

そとは すこし ひんやりして いました。

ひとつめに あったのは、ベランダの タオルでした。

「くもの ところへ いきたいんだ」

「くもなら 上だよ。ずうっと 上」

タオルは ぱたぱた ゆれて、上の ほうを さしました。

ふたつめに あったのは、やねの 上の ねこでした。

「くもの ところへ いきたいんだ」

ねこは 大きな あくびを しました。

「くもは つめたいよ。おふろの ほうが いいと おもうけどね。ぼくは はいらないけど」

みっつめに あったのは、かぜでした。

ぴゅううう。

「くもの ところへ いきたいんだ」

「よし、のせて あげよう」

かぜは ふわりを せなかに のせて、びゅううんと 空へ のぼりました。

いえが 小さく なります。町の あかりが 小さく なります。

ふわりは だんだん さむく なって きました。からだが ちぢんで、小さな 小さな 水の つぶに なって いきます。

「どうしよう。ぼく、きえちゃうのかな」

そのとき、大きな くもが ふわりを うけとめました。

「おかえり」

「おかえり?」

「みんな さいしょは どこかの ゆげだったんだよ。おふろの ゆげ、やかんの ゆげ、田んぼの ゆげ」

まわりを 見ると、小さな 水の つぶが いっぱい います。みんな ふわりと おなじ 大きさでした。やかんから きた つぶは、まだ すこし ぴいぴい いって いました。

くもの 上から 下を 見ると、みおちゃんの いえの まどが 見えました。あかりが 一つ、ぽつんと きえました。みおちゃんが ねたのです。

「あしたの あさ、つゆに なって、あの いえの にわに おりようか」と くもが いいました。

「うん」

ふわりは くもの なかで、ほかの つぶたちと くっついて、まるく なりました。しずかで ふかふかで、すこし ひんやり。おふろとは ちがうけれど、わるくない ばしょでした。

おやすみなさい、ふわり。

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