長編『返事は、港で』 第7章
高校三年 ― 同じ東京
No.39
拓海へ
受かった。
第一志望じゃないけど東京の大学。文学部。本を作る仕事に、たぶん一歩近づいた。
おばあちゃんに電話したら、三秒黙ってから「そうね」と言った。それから民宿のお客さんの悪口を十分言って、最後に「東京のごはんは高いから、ちゃんと作りなさい」と言った。
拓海は? 専門学校どうなった?
遥
*
No.40
遥へ
おめでとう。
おれも受かった。調理師の専門学校。新宿。二年制。
母さんは最後まで反対してた。でも入学金は払ってくれた。振込用紙に判子を押しながら「父さんみたいにならないでね」と言った。
父さんは先月、焼き鳥屋の店長になった。二十年目で。母さんにはおれから言ってない。
それで、たぶん気づいてると思うけど。
同じ東京になる。
遥の大学どこ。
拓海
*
No.41
拓海へ
大学は中央線の立川のほう。
新宿から電車で三十分くらい。
調べた。
遥
*
No.42
遥へ
三十分か。
近いな。
それで提案がある。
会わないで、手紙を続けないか。
変なこと言ってるのはわかってる。三十分で会えるのに。
でもなんか、会ったら手紙が終わる気がする。LINEとかで話すようになって、そのうち話さなくなる気がする。クラスのやつらとは、みんなそうなったから。
手紙は終わらなかった。No.19 でおれがやめるって言っても、遥が勝手に続けた。
だから続けたい。
あと単純に、会うと緊張する。浅草のとき何しゃべったか全然覚えてない。
拓海
*
No.43
拓海へ
変なこと言ってる。
でもわかる。
いいよ。手紙で。
ルール。
一、会わない。(会いたくなったら手紙で言う)
二、LINEは交換しない。
三、番号は続ける。
わたしも浅草で何しゃべったか覚えてない。人形焼きの中身を三回聞いたことだけ覚えてる。
東京の住所が決まったら送ります。
遥
読み終えて、どうでしたか